9講 シリコーン型の組み立てに潜む、界面張力の罠。カミのアジャスター作戦。

今回は、3講の所で触れた型の組み立てについて掘り下げてみようと思います。

シリコーン複製を行う場合、シリコーン型をどれだけ歪めずに組み上げる事ができるか、これがパーツの出来栄えの良し悪しに、大きく関わってきます。

<前回の 8講 ストローで実践。ロートとバキュームの使用効果!は、コチラから!> 

キャストは、良くも悪くも、型のどんな小さな歪みも正確に捉えて反映します。ですから、精密なパーツを正確に作る為には、柔らかいシリコーンを歪まない様にする仕掛けが大切で、そのために、型の大きさに合った板きれの存在は、必要不可欠なものと思っています。

ただ、この板の存在が、逆にシリコーン製の型を歪めてしまう大きな要因になることもあります。。。

意味不明の謎かけのようですが、、、

厚みを持った板は、両側から真っ直ぐ均等に力を加えて、両面取りシリーコーン型をしっかり挟んでくれるはずです。

それなのに、出来上がったパーツはと言うと、なぜか真ん中あたりで、薄いバリが固まっています。

<分かりやすいように、緑のパーツで実験してみました>

なぜそのような事になるのか?

この現象は、長い間謎のままでした。。。

 

界面張力の仮説


シリコーンで型取りをするときに必ず出る表層のビロビロ。

当然、シリコーンを型枠から外す時にそのビロビロは取り除きますし、ある程度平らになる様に面取りもするのですが、その面取りの難しさや、なんといっても肝心な所の裏側ですから、そこまで厳密に平らに面取りしている訳ではありません。

それがある時、何となく、妙に気になり出しました。

雑な処理のままで、ガビガビしたままの山脈。

コップに水を張った時起こる界面張力現象のように、内側が窪んでいるシリコーン型の裏側。

 

「もしかしたら、バリの原因は、裏側の界面張力?なのではないか?」

 

と思うと、こんな仮説が、頭に浮かびます。

 

型枠から外して、成型作業に入る際、

 

 

結果、

 

というシナリオ。

シリコーン裏側の処理が不十分なまま、型を板に挟んでしまうと、盛り上がっているのは外側なので、同じ力が掛かればわずかに薄い内側のシリコンは圧力が弱まります。そして、肝心な部分であるキャストの溜まる部分は、圧力の支え自体が無いので、シリコーンが歪む先はココ。

そんな状態で、キャストを通す為に、傾けたりトントンしたりして力が加わると、その弱い隙間に液が入り、、、毛細管現象的な要領で、、、

結果、薄いバリが出来てしまうのではないか。。。

(もしそうだとしたら、固まったシリコーン裏の界面張力部分を削って平らにする事、とても大切かも。)です。

このバリ、結果として歪んでいるから出来るモノであり、パーツの精度が落ちている証拠となるだけでなく、何より、、、取るのが地味に、面倒くさい。

もし、裏側を平らにすることでこのバリが無くなるのであれば、それは絶対に実践するべきです!

 

シリコーン裏側の平面化、解決方法


、、、ただ、実際の所、またしても大きな問題が出てきます。

それは、界面張力の部分だけを、キレイに手作業で取り除くは、とても難しい、技の必要な作業であるという事。

とにかくプリンプリボヨンボヨンのシリーコーンは、羊かん切りならまだやり様も有りますが、うす~く剥ぐように削ぎ切るのは、まずそれだけで難しく、それを均一に平らになるように、きれいに削るなんて事は、まずプロでも難しい事だと思います。。。

そしてやり過ぎると、今度は角が落ちすぎて、外周部分の圧力が落ち、結果、

キャストの液漏れ

大惨事!

という状況になりかねません。

 

、、、いつも不器用ネタばかりですみません、、、ただ、そこで考えたのが、

(じゃぁ、挟めば良いじゃん!)の

「紙(カミ)のアジャスター作戦。」

 

ある程度カッターで削ぎ、何となく平らに調整した後、型より少し小さめに切った紙を挟み、調整する、と言う作戦。

いつもながら安易ですが、これは地味に効きます!

ブロックから外したシリコーンに出来ている、界面張力の高さは推定1~2㎜程度。

その界面張力の部分も、不器用なりに頑張れば、大体0.3㎜から0.5㎜位にはならせると思います。

あまり頑張りすぎると、中央の平坦な部分よりも低くなってしまうので、そこそこの所でやめます。

そして、削って出来た四角い山脈の内側に丁度良くなるよう、コピー用紙を折ったり、切ったり、重ねたりしてまとめます。

普通のコピー用紙の厚さは0.09㎜。ですから3~4枚重ねて糊(のり)やらセロテープでまとめてやれば、完成です。

紙を挟んで作ったパーツはこちら!

最初の緑色パーツと見比べて下さい。

ホント、全然ちかいます。

 

最初の頃は、型裏側の事まで気が回らず、きっちり合わせ、全く隙間が無い様に見えているのに、何故隙間が出来るのか、理由がさっぱりわかりませんでした。

(絞め方が足りないんじゃないか?)と思い、それはそれは、ギュウギュウ締め上げていた時期もありました。

型の表ではなく裏の部分、、、

作業にはいると、他の事に目を取られて、なかなか気が回らない部分。

シリコーンは、本当は界面張力などしないのかもしれません、が、型元にシリコーンを流し込んだ後空気を抜くために、前後左右に傾けたり、シュポシュポで吹いたり、軽く落としてみたりする内に、あれだけの粘度ですからどうしても、型枠の喫水線より上の所に付着してしまいます。

シリコーンを動かさずに空気を抜くには、真空ポンプと容器があればよいのでしょうが、値段が高いので持ってません。また、家庭の調理用の真空パック機は、確か5,000円位の電動モノを買って使ってみましたが、駄目でした(空気が殆ど抜けなかった)。

結果、「紙(カミ)のアジャスター作戦。」が、最もお手軽且つ安上がりで、シリコーンの裏側問題を解決できる方法と考えています。

裏側を正すと表も直る。

些細な事ではありますが、大きく差がつくこの部分、私と同じような体験をしてお困りのかた、是非一度、トライして見てはいかがでしょうか。

 

 

神の谷の割り下

 

<次回 10講 レジンキャスト同士の接着 ー余りキャストの活用術ー へ>